2018-03-06

3月4日のこと



お墓参りに奈良へ行く。
もうずっと以前に亡くなられている方なので、悼む訪問というよりも
ただわたしがこころの中でお礼を言うための、朗らかなお参り。

 一緒に行ってくれる友美ちゃんが
近所の川べりに水仙が咲いていると思う、と言うので
行ってそこから2本いただいてくる。
手元の良いかおりを愉しみながら向かう。
 そのひとには、立派な花を買うよりも野の花が似合うように思う。


奈良の高台にある百毫寺の霊園へ、バスと徒歩で行く。
バスを降りた後は長い上り坂が続く。
3月のはじめなのに4月のような陽気で
坂道を歩いているとじんわり汗ばんでくる。
ちょうど梅の季節で、あちこちでやんわりと咲き始めている。
どの枝ぶりもそれぞれに雰囲気のある佇まいで
見つけるたびに近寄っていっては、あれこれ感想をおしゃべりする。

去年、伊豆に行った時もそうだったけど
遠出をすると、そこで生えている草木が気になる。
自分は、植物について話すのが好きなのかもしれない。 

霊園に到着し、目当てのお墓を探す。
まずは、新しくピカピカなものではないだろう、と予想して
ほどよく経年変化が進んでいるような様子を目安に探しはじめる。
大きな一区画をひとつづつ見ながら探すけど
広い霊園では、そう簡単に見つからない。
友美ちゃんも向こうの違う区画を探してくれる。
横に逸れた山の斜面に、眺めが良さそうな列があり
こんな景色が好きなんじゃないかしら、と想像して見てゆくけれど、どれも違う。
もしかして、百毫寺の霊園、と言われてたけどここではないのでは、、、と
ほのかな不安がよぎる。
それでも、春麗らかな日和、家族でも親しい人でもない方のお墓を
友人とふたりで一生懸命探しまわる様子がなんだかおもしろく思えてきて
見つからなかったとしても、これはこれで良い時間だったと言えるなぁ、と思う。

残りのひと区画に入ろうと石段を上がったところで
もしや、と感じるひとつを見つける。
脇にある石板に刻まれたふたつの名前を目で追う。

  岡潔
  岡ミチ

「あ。これだ、、、」
無機質な墓石が急に親しみのあるものに見えてくる。
友美ちゃんを呼び、桶に水を汲んできてから、一緒に様子を眺める。
彫られた記述を詳しく見ると、命日が一昨日のことだったのが分かった。
そのせいか、鹿に食べられたり枯れかけ始めているけれど
桜草と紅梅の枝が供えられていて、数本のお線香が残っている。
以前に参った人の気配がまだそこに漂っていた。
偶然にも、自分も近い日に来られたことがうれしかった。

目をつぶって手を合わせる。

なんとなく、きもちがひと区切りするような
清々しさと温かさ。

こんど岡さんの本を読んだ時には
ちょっとだけ、知り合いのような近さを感じるかもしれない。

もちろん、ただわたしが勝手に、だけど。

でも、そんな気持ちのために行ったのかもしれないな、と思う。