2017-10-27

棒 について




はじめに

一本の棒を拾い上げたとき

何を思いそれを選び取ったのか




きれいな色や肌触りだったからか

見たことのない種類だったからか

何かをしようとするのにちょうど良い長さやかたちだったからか




相対するその時
そこには無限の創造性がある


棒 はわたしにとって
ものごとのはじまり
こころの発動の象徴。






 *




2017-10-26

伊豆探訪/原風景




先月、一年ぶりに伊豆を訪れた。
離れていた時間は、知った顔に再会し自然とつながる。


目的の渡辺君の個展は、穏やかな気づきと励ましを感じられる内容で
見ていると、ここ最近ずっと心にあった自分の展望を 良し と言ってもらえるような感じを思う。

彼の家を訪ねるのに伊豆半島を南下する車内で、つくることについていろいろと話す。






渡辺君の家族はみんな、身のまわりの草木や生き物についてよく知っていて
その様子を眺めていた時、ふと自分の幼少期の記憶が思い出された。


当時は東京都内でも土のままの地面も残っていて、草木の茂みもあり
さらに、わたしが幼少期を過ごした木造平屋の住まいは古く、広い土間もあって
自分が家の内にいるのか、外にいるのか、その境は曖昧だった。

母は冬になると「うちは寒いから、外で遊んできなさい」と
今聞くとあべこべに聞こえる台詞をよく言っていたけれど
これは今、家族間の昔話になるとよく挙がる笑い話になっている。

わたしの日々の遊びは、もっぱらままごとの泥 あそびで
だいたい何かを料理するまねごとをしていた。

材料になる草花や実や種、石ころや土はいろいろなたべものに見立てられて
わたしは干してある布団でつい手を拭いてしまうのをよく叱られていた。




小さいころの自分がどういうものに惹かれたりおもしろがっていたりしていたのか。
自分のいる場所を知る感覚は、そういえばこういう空気感の中でだったなぁ、と
大人になったわたしの中に、当時のこころの動きがザァーっと降ってくるように感じた。






創造する者は、よくその動機となる「原風景」について尋ねられることがある。

わたしには、確たるものがない。

けれど
”原風景”は光景そのものではなく
その時のこころを思い出すところ、ということだったのだなぁ、と
伊豆に出かけた後で、ぼんやり気付いたりしている。

大人になって出会った、渡辺君の家族と過ごすことは
わたしにそんななつかしい原風景を思わせてくれる。





数学者の岡潔は

こころのふるさとがなつかしい
という情操の中でなければ、
決して生き生きとした理想を描くことはできない

と、自身の著書で書き記していた。(「日本のこころ」)



はじめて個展をやらせてもらったギャラリーの店主は以前
「自分は今までずっと、なにかをなつかしい、と思う感覚がわからなかったのだけど
この仕事をしたことで初めてその感覚が分かるようになりました」
と言っていた。





次回、展示をさせてもらう大阪のギャラリ― 無由 の守屋さんが
こんどのDMの記述のなかに印象的な引用を入れてくれた。


森田春菜 個展「棒」

造形作家 森田春菜の個展を、新しい場所 無由にて開催します。

作家の「棒」のみの展覧会です。

「棒」は作家の陶土の造形物です。
それは彼女のメッセージでもなく、自己表現でもない。
それががどういうものなのかは、手にする人それぞれに委ねられているのです。
私が最初の一本を手にした時に言葉に出来なかった感覚は、「懐かしさ」だったと後に知ることとなりました。

思考する頭をしばらく横に置いて、手触りを通じて交わされるなにかを感じてみてください。
ご自身の「棒」を見つけに、ぜひお越しください。

ippo plus
守屋里依



『懐かしさとは、過去への憧憬(しょうけい)のことではなく、
周囲と通い合う心の実感のことである。
懐かしいということは、それだけで嬉しい。』岡潔



森田春菜 個展「棒」
開催場所:無由 大阪府吹田市五月が丘東2 ローズコーポC棟401
開廊期間:2017.11.25(土)ー12.3(日)
休廊日:11.30(木)、12.1(金)
時間:12:00-18:00
作家在廊日:初日 11.25(土)





 *



2017-09-24

秋のグループ展のお知らせ




「花とうつわ」

2017年 10月4日(水)~9日(月)(最終日17時まで)

shizen
渋谷区神宮前2-21-17
03-3746-1334
                                        
                 
花生け: 雨宮ゆか(日々花主宰)
作家:  阿南維也、桑原哲夫、木曽志真雄、田中潤、能登朝奈
林友子、原田譲、広川絵麻、増渕篤宥、山野邊孝、森田春菜




今回は自身の作品に花を生けて頂きます。
草木が加わり、いつもとはまた異なる新鮮な景色が現れることと思います。
作品を提供する作家側もたのしみな機会です。

7日(土)午後2時ごろから在廊予定です。




*


2017-09-08

Urban Potters: Makers in the City



この秋に出版される
Urban Potters: Makers in the City -世界6都市(New York, Sydney, London, Copenhagen, Sao Paulo and Tokyo)で活躍する現代陶芸作家- についての本で
”Tokyo”作家のひとりとして紹介させていただくことになりました。






陶芸作家の古荘美紀さんにご紹介いただき、今回の掲載が決まりました。
貴重な機会に推していただき、感謝です。
そして同じように、やきものでモノづくりを続けている友人の熊谷幸治さんもぜひに、と巻き込んでTokyoからは計4名掲載されているようです。

ご興味持たれた方、ぜひウェブサイトをご覧ください。
よろしくお願いいたします。

Published by LUDION.
The official launch is in London :Thames&Hudson



*



2017-08-03

「モノの力・ヒトの力―縄文から現代まで 人と工芸の間にやどるチカラ―」

  
企画展「モノの力・ヒトの力―縄文から現代まで 人と工芸の間にやどるチカラ―」
 

平成29(2017)年7月28日(金)~10月9日(月・祝)
会場:國學院大學博物館 企画展示室
開館時間:午前10時~午後6時(入館は午後5時30分まで)
会期中休館日:8月13日(日)~24日(木)/9月11日(月)
入館料無料



國學院大學博物館の展示開催中です。
博物館は縄文時代の発掘品をはじめとする常設内容も充実しています。
青山渋谷近辺にお越しの際は、ぜひお立ち寄り下さい。
今日は会場ほど近くの山種美術館/川端龍子展も素晴らしい内容です。
お時間のある方は2つの会場のハシゴもお勧め。





*



2017-06-22

Black Forest @pragmata



2017年7月14日(金) – 23日(日) 
[個展] Black Forest
東京都中央区八丁堀2-3-3-3F
 tel. 03-3297-6011
 open: 12:00–19:00 (※最終日は18時まで)
在廊予定日 7/15(14日午後以降)



 *


わたしは今まで、この制作活動を約十数年ほど続けているのですが、なぜこのような作品を作っているのかと言うと、その動機は、ただ自分が心惹かれる事象を陶の立体物で思うままに表現しようとすることなのかと思います。
  今の時代を生きる多くの人にとってそうであるように、わたしも日々を過ごす中ではいろいろな思いを持つことはありますが、この表現は世の中へのメッセージや個人的な感情ではないところから生まれています。
 作品は自分の自己表現でもなく、歴史的な美術の流れやカテゴリーにもとらわれず、そしてまた陶芸の概念とも異なるところで存在している、自由で平和なアートピースです。なのでこの作品がどういうものなのかは、このモノに出会う人自身がそれぞれに感じて受け取ると良いと思っています。

 わたしの表現は、やきものの土とそれに関わる素材や自然現象の力を借りることでようやく具現化することができています。
 土の造形は、特別な道具や熱を介さずに、自分の意図を素手で直接かたち作ることができますが、そこでは意識や解釈を通さない無意識の手の反応が加わっているのではないかと思うのです。頭で思考する事のほかに手触りを通じて交わされるなにかが、この創作のある部分を担ってくれているように感じます。
 そしてこの触感の要素は、わたしの普段の生活の中でも創作のインスピレーションに繋がることが多々あり、自分でもそこに着眼する理由がなぜなのか説明し難いのですが、わたしは、かたちと触感が調和したモノの姿から情緒や実在感を感じ取ることがあって、そのものがそのものらしく表れた姿かたちや、手触りを呼び起こす表情に、自分の生の感覚を入り込ませて見ている世界があるのです。

 また土については、各段階でその素材の性質が変容することも大きな特徴です。特に焼成では自分の意図しなかったことや想定以上の出来事が多く起こり、作品はいつも手を施している時に見ていた姿とは全く異なる様相になって出来上がります。
 やきものの創造は絵画や彫刻のように自分の行為の痕跡を確かめながら進むことはできません。それでも、誠実に考えを尽くし丹念に工程を重ねることと、その最後は、自分の力が及ばないところで出来上がるというのが、わたしの表現手段の過程ではとても重要な部分で、そこから得られる経験はわたし自身に大きな影響を与えています。
 焼成を経て現れた未知の存在に対する時の衝撃と、またそうなった絶対的な出来事を受け入れることは、自分が自分だけではないそれ以上の大きな存在の中に在るような広々とした感覚、穏やかな慰めと安定した気持ちを呼び起こしてくれます。
 わたしはこのやきものの表現と関わることでようやく見えてくる世界や、気づかされる感覚があり、制作はそれらを求めてこれからも続いていくことと思っています。


2017.6 森田 春菜    


 *



2017-06-04

LUDION's Q&A


この秋に出版予定の”世界6都市で活躍する現代陶芸作家”についての本で
”Tokyo”作家のひとりとしてご紹介させていただくことになりました。
出版社はベルギーの、美術書を主に手がける LUDION社
どんな本に仕上がるのかたのしみです。

先方から制作についての質問をいくつかもらい
まず、日本語で記述したものを
オーストラリアに住む友人のKanakoが英訳してくれました。

彼女が細やかな配慮で選んでくれた語彙や
作業途中で訊かれる抽象的表現の意味合いの解釈確認、質問。
手間も時間もかけて 誠実に対応してくれる
その心配りには始終感心していたことでした。

せっかくなので、ここでご紹介。



- Tell me a little more about your work. How do you proceed? What are your preferences in terms of clay, firing, glazing, etc…?

Many of my works are made with Shigaraki’s terracotta. I also occasionally work with porcelain. I have used the same terracotta clay for over 13 years, as it has right viscosity and fine grainy texture. My hands have adjusted well to this terracotta over the years, which allows me to manipulate the clay naturally and almost intuitively, without particular awareness into creating a shape.
My creative process typically starts with either throwing a three-dimensional shape such as bowl or cylinder on wheel, or rolling out slabs.
I do not usually begin with a clear image of the piece that I am about to make, but only have a rough idea of the size in mind.
After meeting the random shape made on the wheel or by slabs, I gradually begin to develop a conscious image of the form I would like to achieve.
The piece would then be cut, sliced or/and joined together with other parts. I continue to explore the final form by manipulating the random shape into a more concrete one, as well as feeling and understanding the limit of the clays versatility.
During this process, emergence of a new form can result from the sliced or cut parts from the original shape. To encounter an unplanned and unpredicted form is one of the fascinating features of ceramic art.
The next process involves sculpturing the piece into a desired form. I do this by carving and scraping with a modeling tool or a saw tooth that is broken into a small workable piece for me to handle. At this stage, I would work like a sculptor.
I pursue the desired form by allowing the piece in my hands to display textural details, its thickness, volume and weight, and emerging figure.
Almost all of my pieces are bisque fired once, and then painted and glazed. I paint the piece to further develop the form, exploring and preserving the expressions and emotions that the initial wheel thrown piece radiated. This may be similar to Japanese painting methods.
I apply raw ingredients of glaze materials, such as minerals and metal oxides using a paint brush, like applying layers of paints. This is done with estimation of its colour and textural results as well as in anticipation of unexpected and incidental phenomena and effects that could emerge on the piece after firing.
The unique method that I employ involves the use of materials such as paper, fabric, cloth and string, in order to accomplish the desired textures.
I apply numerous layers of raw materials and repeat the firing process until the piece almost reaches a place where human touch seems to be long lost, and its presence becomes independent and organic. The firing temperature is about 1210 to 1230℃ in the electric kiln.



- Where did you grow up and what did you study?

I was born in Chiba and raised in Tokyo. I first started to study art, mainly drawings and paintings in high school.
I studied ceramics in the university undergraduate course which exposed me to the concept of three-dimensional, ceramic sculptural art expression, using clay as a medium. This led me to develop my style of ceramics as sculptural rather than as functional and practical, such as making everyday wares.



- You told me you work in a company on weekdays and dedicate yourself to ceramics in the evenings and on the weekends. Can you tell me a little bit more about that?

Upon my graduation from the university, I started to look for any available job that I could do, as I found it difficult to support myself as a full time ceramic artist. I was fortunate enough to be offered a job to make samples of leather bags in a leather product company.
I learned the skills of hand crafted bag making, and I worked there for about eight years. I moved to another Japanese leather product company about 5 years ago and am currently working as a sales person.
I have been utilising evenings and weekends for ceramics and studio exhibitions, whilst working in a company during weekdays.
For me, it is very important to explore the nature of ceramics and allowing the pieces to form themselves freely. My focus is not drawn to enable myself to work as an independent full time ceramic artist. This is why I have naturally established this life style between ceramics and daytime work as necessary.



-For you, what’s the best part of the process of ceramics? Why?


The reason that I am attracted to clay is that it makes it possible to demonstrate my natural sense in the objects that I make with my bare hands.
Many unexpected and even uncontrollable textural changes happen during the creative process, which I find fascinating.
The breadth of ceramic textural possibility and versatility maximises my creative process, embodying the view and awareness of the natural world I perceive.



- What’s the best thing about being based in Tokyo? And what’s the worst thing?

The best thing is that I have more exposures to people and places, to share and exchange art sense.
The worst things are that there is a lack experience and feel of nature, and that it is very costly to be based in Tokyo.



- Which ceramicists (of today of from the past) influence you? Where do you find inspiration?

The University granted me the privilege to meet Professor Kimpei Nakamura, who taught me expressional art using clay as medium. He was the biggest influence in pursuing my current style of sculptural ceramics.
I also had an abundance of opportunities to share the ideas of works and materials and to show experimental pieces with peers at university, which ultimately guided me to developing and establishing my own original methods.
I find inspiration from organic materials in the natural world and evidence of natural phenomena, as well as the physical experience and atmosphere that I encounter in nature.



- You dedicate yourself to a millenary craft. What does it mean to you to make 

each piece by hand in a world that is dominated by mass production? Is this a philosophy that appears in other aspects of your life?

My primary motive is to make sense of what I see, feel and understand in the natural world and express that in the form of ceramic objects. There is no intention of delivering a particular message to society through my work.
I am apprehensive about the matter regarding world’s economic prevalence in mass productions; however, my ceramic works are not meant to be compared and used to answer this matter.
My ceramics do not reflect my inner thoughts and feelings, and are not defined by traditional art theories or the concept of craft design. I believe that my ceramics are art pieces that are free, undisturbed and peaceful. I want people to be free to feel and interpret my works in their own way.
I feel my inner sense that are influenced by ethnicity as a Japanese is interesting, and I would like to explore it more in cooperation with my creative activity.



- What are your plans for the future?

I would like to continue to explore the natural world, and to express what I observe and experience from the natural world in a form through ceramics.


この機会に、見ず知らずの私を推してくれた陶芸作家の古荘美紀さん
また、私からの誘いを受けて一緒に掲載の協力をしてくれた土器作家の熊谷くん
急遽の撮影を快く引き受けてくれた、デザイナーの鎌田くん、高橋マナミさん
なによりも、日本語でも難解な私の記述と、熊谷くんの記述も
丁寧に英訳してくれた友人のKanako。
彼女の協力により、今、変化の多い私の様子を遠慮なく言うことができました。
そして、この機会の話題をいっしょに喜んでくれた、お世話になっている方々。
わたしはその輪の中にいるのをしみじみうれしく思いました。

みなさま心よりどうもありがとう。
良い本ができるといいです。



 *